個性なんて言葉でぼんやりしてんなよ

万人に個性がある。

個人である以上、個(こ)の性(さが)である個性はある。

 

その個性がほんとうに生かされたなら、すべての人の夢が叶うっていう意味での個性はない。

夢の実現は限られた才能を持つ人にしか許されない。

夢なんて漠然としたものを形にできるすごい能力を万人が持つなんて無理でしょ。

 

ただね、ただ。

すべての人が他の人とは違う人生のストーリーを作る権利は持っている。

その人生が客観的にはハッピーで終わるのか不幸で終わるのかはわからない。

でも客観的には不幸かもしれない人生を主観的にはハッピーなものに書き換える権利を個人は持っている。

というかね、人生の幸不幸なんて主観的なものでしかない。

もっといえば主観しかない。

「君の物語の主人公は君自身だ」ってことだ。

 

ただ「主人公」って響きには誰もが周囲からの注目を浴びる瞬間、輝ける瞬間があるってイメージがついてまわるけど、凡人が主人公になったからといってそんな派手な場には出会えない。

ステージに立ってスポットライトは浴びられるけど、その舞台は小道具から照明からすべてを自分で用意した観客のいない舞台ってことだ。

 

「万人に与えられた尊い個性」なんて甘い言葉で、薄ぼんやりとした夢なんて見てるんじゃないよ、凡人ども!

世の中は不公平だよ。

差別で満ちあふれている。

貧富の差、教育の差、機会の差。

あらゆるところに住み分けがあって、まじわれない人や物とは一生まじわれないままで終わるのが人生だ。

他人はたくさん持ってるのに自分には手に入らないものはたくさんある。

 

だからそれが個性だ。

だったら自分にだけしか書けないストーリーで自分だけの舞台に立て。

他の誰のものでもない自分だけの物語だけは絶対に万人が書ける。

書くっていったって文章じゃなくてもいい。

生きて、働いて、我慢して、喜んで、悲しんで、泣いて、笑って、刻め! 

 

夢見るな。

今を見ろ。

今この一瞬に個性のすべてが詰まってる。

生きろ。