めんどくさい初老のおっさんにならないために

南無阿弥陀仏

こんにちは、

Rin-nengです。

 

「俺はお前を信頼しているから仕事のやり方には口出しをしないが、何かあったらケツだけはもってやる。だから安心して好きなように仕事をしろ」

入社直後に社長は僕にこう言った。

その1ヶ月後には連日2時間以上にわたるブレインストーミング、あるいはミーティングと称した説教タイムがはじまった。

「〇〇(僕)くん。ブレインストーミングって何か知ってる? どんな意見に対しても批判せずアイデアを出し合うものだ。だから遠慮なく意見を言えよ」と促され意見を言うと、その意見に対する質問という名の入り口から延々と説教がはじまる。

出会った頃からどこかおかしいなと思うところはあった。その社長はやたらと愛想がよく、腰が低かった。これは演技だったことが社長と従業員の関係になってからわかった。

この社長、他人とは徹底的に距離を置くから必要以上に謙虚になるのだが、身内になったとたん一気に距離を詰めてくる。徹底してコントロールしたくなるようだ。

この社長のもとでは10年で11人の部下が辞めている。過去の部下に対する社長の評価は次のようなものだった。

まず二十代前半の女の子について。「その女の子にちょっと注意したら、ある時父親が、『うちの子がもう会社に行きたくないと言っているのですが、何かあったのですか?』ってたずねてきた。いい歳して親に相談する子も子なら、親も親だ。この親にしてこの子ありだな」

三十代の既婚者女性に対しては、「仕事を任せてたのにある日、『妊娠したから辞めます』って言ってきたんだ。別の時にはそいつに仕事を頼んだら、『それは私の仕事の範囲を超えています』って断ってきた。社長からの仕事を断るやつがいるか? そんな女だから、好き勝手にセックスして子ども作って会社を辞めるんだ」

社長の本性を知らないときは言葉遣いこそ悪いが一理はあるかなと思っていた。でも本質を知ると、はっきりわかった。あんな説教を毎日マンツーマン(ここ重要。この会社は社長と従業員二人だけの会社)で聞かされ続けたらまずもたない。

気の弱い二十代前半の子は親に言うしかないだろうし、少々気の強い三十代女性は反抗的な態度に出るだろう。

その他にも、言うことを聞かないからと3日でクビになった男性、どう考えたってそれ嘘だろとしか思えない理由で辞めた女性などがいた。

最初は懐が広いように見えるのだが、知れば知るほどちっぽけな人間だというのがバレていくこの社長のようなタイプの人。こういうタイプは過去なんどか会ったことがあるはずなのに騙された。職が欲しいという焦りが目を曇らせたのだ。僕が悪い。

 

でも僕はこの社長から人生で大切なことをひとつ学んだ。それは

 

説教やアドバイスはあまり意味がない

 

ということだ。

ここに気づけて僕は幸せだ。

世の中には説教やアドバイスが大好きな人が多い。人が何かしら愚痴や不満をこぼしたときに、「あなたはまだ幸せよ、素敵な旦那さん(奥さん)がいて」とか、「仕事があるだけでありがたいと思わないと」とか、「健康っだってだけでもありがたいことだよ。感謝しないと」などと言う人があなたのまわりにもいないだろうか。

これ、アドバイスです。ゆるやかな説教です。

幸せの基準は人から決められるものではない。自分が決める。大きなお世話だ。放っておいてやれ。

こんなアドバイスで、「そうか、僕は幸せなんだ。文句なんか言ってごめんなさい」って反省できるやつなんていない。いたとしたら、そんな悩み最初から屁みたいなものだったってこと。

こうやって人は知らず知らずに他人のテリトリーを犯しているのだ。

アドバイスをせずに人と会話しようとすると案外難しかったりする。いかに自分がアドバイス的な発言を頻発しているのかがわかる。

説教やアドバイスを受けるべきなのは説教やアドバイスをしている本人なのだから、説教やアドバイスは無意味だ。自己満足に過ぎない。

説教やアドバイスをしない方が人から話しかけてもらえるようになる。価値観を押し付けないから相手が安心して本音を言ってくる。健康的な人間関係が築かれていくのがわかる。

そういう意味では、「社長、ありがとうございます」だ。ここに気づいていない五十代ってけっこう鬱陶しいからね。ほんとに、よかった。

社長! ほんとに、南無阿弥陀仏