スケープゴート・ババア

でしゃばりでよく喋る。仕切りたがりで注目を浴びたがる。仕事が雑でミスが多い。そのくせ自分は人一倍周囲に気を遣っていると自画自賛しているから人のアドバイスは受け入れない。

職場にいるめんどくさいおばさんのことだ。

こういうタイプは遠慮なく人のテリトリーに入り込んでくる。たずねてもいないのにアドバイスをしてきたり、余計なお節介をやいたり。そのくせ責任は取ろうとしない。

どうやって育ったらこんな50歳の人間ができあがるのか。よっぽど周囲の人間が優しかったのだろう。めんどくさいから避けて通していただけかもしれない。

自分を客観的に判断することなんてできないのはわかっている。きっちり内省なんてできないのは当然なのだけれども、それにしても、このおばさん、内省してなさ過ぎるにもほどがある。

いなくなればいいのにと最初は思っていた。このおばさんがいなくなれば職場がいい雰囲気になり、仕事もスムーズに運ぶようになるのにな、と考えていた。

しかし果たしてそうだろうか。このおばさんに僕の負の感情が一極集中することで、他者への怒りや不満が緩和されている可能性はないだろうかと考えてみた。

結果、「その可能性はある」という結論に達した。おばさんがいるおかげで、おばさん以外の人がしでかす何かしらのミスはほとんどは心に引っかかることなく流せている。

おばさんは僕にとってスケープゴートなのだ。

そう考えてみるとおばさんの存在がありがたいものに変わる。おばさんがいなくなってしまった方が心の安定が失われる可能性があるわけだ。

なるほど。人間関係はパズルのピースのようにうまくはまっている。近くで見るとそのパーツだけいびつに思えてしまうが、離れてみると綺麗にはまっているわけだ。

こう考えていくと広い視野が大事だってことがよくわかる。広い視野、大局観。しっかり手に入れたい。

ただなぁ、おばさん、仕事が雑だからお客様には迷惑をかけている。

それは我がボスに恥をかかせることにもなるので、そこだけはなんとかしてもらえないかねぇ、なっ、おい、ババア!

ありがとうスケープゴート・ババア!