腹巻を巻けという命令/一日一食
仕事から帰ってきて着替えるとき突然、「腹巻をしよう」と思った。
寒いわけではない。
どちらかというと暑い。
日中は半袖にサンダルで動いているくらい暑い。
僕は汗かきだ。
薄着でいたい派だ。
そんな僕が腹巻をしようと思い立ち、義母が編んでくれた毛糸の腹巻を巻いた。
その晩、食後にお腹をくだした。
暑いのに腹巻をしようと思い立ったのには意味があったのだ。
身体が、「腹を温めろ」と訴えていたわけだ。
理屈ではない。
身体が変化を察知して意識を動かした。
身体の訴えの意味を理屈でなく身体で納得する今回のような体験は初めてだ。
僕は極度の運動音痴と、ある身体的特徴から肉体を徹底して軽視し、理論理屈で物事を考えることで肉体的な劣等感を補償し優越性を確立しようとしてきた。
そんなのだから、身体の訴えなんて聞くつもりもなかった。
過度な喫煙と暴飲暴食で身体を痛め続けても平気でいた。
肉体に対しては徹底的に鈍感だった。
そんな僕が腹巻をした。
身体の変化に敏感になるってかっこいいと思った。
なんだか自分がバージョンアップした気がする。
研ぎ澄まされてきたようで嬉しい。
これは一日一食の効果だと確信している。
空腹感は意識を鋭くしてくれる。
いろんなものに敏感になる。
肉体的な劣等感から、これまでは頭でばかり物事を考えてきた。
これからは身体でも感じられるようになりたい。
一日一食を続けたら、なれる気がする。
野生的ってかっこいい。